「ワタシのは喰うな。コレはワタシのモノだよ」

自らの不幸なんて気にせず、彼女は乗り越えてきた。
そのポリシー通りに、
何者にも頼らずに、
何物をも頼らずに、
彼女は彼女のチカラで乗り越えてきた。

今も昔も…
そして、これから先も。

「貴方は強いね」
「アンタもね」

アハハハとまた笑い合う。彼女はワタシには眩しすぎた。

「アタシはこんなモンさ。だからさ、アンタはアンタの好きな者の為にチカラを使いな」

アタシ以外の者にね、と継ぎ足した。

彼女は救えない。
だけど、決して、
彼女は報われないワケじゃない。

だから、
ワタシは報われぬ者の為に、このチカラを使おう。

「さて、そろそろアタシは行くよ」
「もう行くのか?」
「もうって…アンタが遅刻しなきゃ、もっと話せたんだけどね」
「おやおや、そりゃすまないね」

互いに笑いながら、
我々は身内だと確認した。

「アタシはホントは結構忙しいんだよ」
「そうなんだ?」

荷物の小さなポーチを担ぎ、彼女は笑った。
彼女らしい、シンプルなポーチを。

「じゃあね」
「えぇ、また会いましょう。君に幸あれ」
「アンタにもね」

二人は最後まで笑いながら別れた。