「何故助けてくれなかったッ!」懸命な処置はしたが救えなかった医者に啼いた。

「何故教えてくれなかったッ!」危篤前をワタシに伝えなかった両親に泣いた。

「何故ワタシは……」最期を看取れなかったワタシ自身に哭いた。

マヨイの身体に取り憑く黒い靄は消えた。
それはまるで、任務を終えた死神の様に……

…………。

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これがワタシの介護記録。
不幸だった妹を想い、慈しみ、そして愛し続けた数年間の記録。
彼女がワタシの全てであり、ワタシの青春であり、ワタシのかけがえの無い妹であったと確認出来る、唯一の術。

この介護記録がワタシの全て。マヨイのためのマヨイだけの介護。不幸な少女を救えなかった、ワタシの悲痛な記録。

救いたかったのは他の誰でも無い。妹……マヨイただ一人。それだけでいい。彼女だけがいい。そんな願いさえ届かなかった、ワタシの不幸。

ワタシが最も幸福で、ワタシが最も不幸な日々を募った介護記録。

マヨイは確かに居た。確かに生きていた。今もワタシの胸の中で生き続けている。それだけでワタシは……不幸な彼女を救おうと思える。

さてさて、それにしても夢の中でさえ自分を慰めるとは……これこそ正に自慰行為だな。だけど……そろそろ起きなくては。

介護記録は終わり。
次は介護することはなく、救済してあげなくては、ね。