「別に探してとは頼んでないよ」

自分に非は皆無と言わんばかりに、少女はしれっと言った。

「勝手に脱け出したら探すだろ。これから脱け出す時は、ワタシと一緒に脱け出しなさい」
「……わかった」

話しがまとまったみたいだが、少女時代の私は意味が解らないみたいだ。
首を傾けたままの姿勢で固まっていた。

どうやら、どこぞから脱走した少女を彼は追い掛けていたらしい。
だけど……それなら何故少女は少年を探していたのだろうか?
見付かれば脱走前の場所に連れ戻されるのに。

「ん……?そういえばこの子は?」
「この子は……その……」

一緒に探していたと言えないのか、少女はモジモジと悩んでいた。
どう言えばよいのか、言葉を選んでいるようだ。

そんなこと考えもせずに、少女時代の私は言った。

「トモダチです」

今日、ついさっき会ったばかりの少女を、昔の私は偽り無く心の底から思っていた事を口に出しただけだった。

「そっか友達か。それなら帰る前に挨拶しなきゃね。ほら」
「うん……今日は……ありがと幸ちゃん。私の名前は……」

マ、ヨ、イ。
そう口が動いた所で景色が白い光だけになった。

なにもかも消え去り、白い光だけに。