私は夢に従った。
夢の中の自分に従った。

夢の中の私はそのまま見知らぬ少年を探し続けた。

日は傾き暗くなり始めた頃に、ようやく私の足は止まった。

……いや、止められた。
もう一人の少女によって。

「えっと……ユキちゃん」
「ん~?何かな?」

私は自分の名前が呼ばれたから反応した。
会って数時間経つのに初めて呼ばれた私の名前。
そして最初で最後に呼ばれた私の名前……。

「もう暗くなりはじめました。今日は諦めます」
「うわーホントだ。いつのまにかこんなに暗くなってるや……。諦めて大丈夫なの?」
「おにぃ……その男の子に会えないなら会えないで、私には好都合ですから」
「こーつごー?そうなの?必死に探してたのに?」
「えぇ。見付かると必ず無理矢理……」

「帰るぞ」

ふと、沈む手前の夕日を遮り、人が立っていた。
背の高い男の子。ハァハァと息が上がっている。

「見付かっちゃいましたね……」
「ッたく……探したぞ。勝手に脱け出しやがって」

口調や態度は怒っているが、彼の雰囲気は怒っていないソレだった。

逆光で顔は見えないが、きっと彼は本気で心配していたからこそ怒り、本気で心配していたからこそ安堵している。