暫く辺りを散策すると、お祖父ちゃんは疲れてベンチに腰かけた。

「ユキちゃーん、ワシはココにいるから、あんまり遠くに行くんじゃないぞー」
「あーい、わかったー」

てってー、とお祖父ちゃんを放置して走り出す。
我が事ながら、なんとも気楽な幼女だろうか。

「せみーせみー」

バッサバッサと網を振り、自然を破壊してゆく。
おいおい…何がしたいのやら…

「いないのー…ん~?」

小さな背丈を越える草を薙払った視界に、同じくらいの背丈の女の子がいた。
子供なのにモデルみたいに細くて可愛い…

「誰?」
「わたし?わたしはね、ユキ!」
「ふーん…」

名前を訊いといて興味無し。
なんて可愛げの無いお子様かしら。

「お兄…背の高い男の子見なかった?」
「背の高い?見なかったよ。まいご?いっしょに探してあげるよ!」

なんて優しい!
なんて可愛い!
なんて天使の様な…って私だよね、これ?

「いい。一人で探すから…」
「ふたりで探した方がいいよ!」

歳は同じくらいだろうが、妙に大人っぽい少女の手を引き、幼い私は見知らぬ男の子を探す事にした。

少女の手は細くて、ひんやりと冷たい感触がした。