それから時が経てば経つほど、私は松本先生のことを好きになりました。

試験監督の時、たまに眠そうにしてたのを見て可愛いなぁと思ったり。
夏に、暑いと言いながらネクタイを緩める姿にキュンとしたり。
冬に、生徒に「寒いよ~」なんて言いながら抱きつかれているのを見て、慕われてるんだなぁと感心したり。




そんなこんなでただいま12月。


今日の朝の天気予報で冷え込むって言ってたなぁ、とぼんやり思い出した。

「コートだしとくんだった…しかもマフラー忘れたし。」

先生はなんだか冷たいし。
本当に今日はついていない。最悪だ。

とぼとぼと駅まで歩いて電車を待っていた私は、気分が落ち込んでしまい俯いていました。

すると、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえて、後ろを振り向いてみると、少し前に学校で別れたはずの松本先生がこっちに歩いてきていた。

「おー。やっと気づいた」
「なんですか、てゆーか先生って電車通勤なんですね~」
「うん。そうだよ」
「初めて知った…」
「あ、そうなの?俺は何回か『あ、田中だ』って思ってたけどね。」
「えぇ~!?声かけてくださいよ!」
「あはは、ごめんごめん」


先生と談笑しながら、なんとなく私は暗い気持ちがだんだん明るくなっていく気がした。だけど、同時に、こんなに笑っていられるのなら、このままずっと先生と生徒の関係だけでも十分かもしれないなとも思った。