「木の枝が道路一杯を覆っていて、まるで緑のトンネルみたいですね」


こいつ、人見知りが激しいくせにこんなにはしゃぐような奴だったのか。

けど、そういう空を見ていて少しだけ嬉しくなってしまった。

この気持ちは俺にとって何を意味しているのかなんて、今は考えようとも思っていなかった。


「いや、俺の横で一人はしゃいでいる奴がいるもんで」


ため息交じり話しても、空はお構いなしに木の枝をずっと眺めていた。


「ああ、女の子か」


「えっ」


俺の指を差した方向を見て妃來が不思議そうな顔をしているので、そういえばこのことを妃來に言っていなかったことを思い出した。

このまま黙っておくと、また面倒なことになりそうだが説明するのがまた面倒くさい。


「一葉、説明してやって」


困ったときの一葉頼み。


「また、憑かれたんだって翔」


「お前、簡単すぎだろ」


「いいよ、それで十分分かるから」


確かに十分分かるから、それで良いのだが・・・