学校は向ヶ丘遊園駅と生田駅の間くらい、やや遊園寄りの場所にある。

ほんの少しの差なのだろうが、学校の最寄り駅は向ヶ丘遊園になっているため電車通学のうちの学生はそこで降りて、駅からあの地獄のような坂道を上るはめになっている。

そんなに坂道を嫌って、一葉は隣の生田に住んでいる。

しかし、遊園ほどではないが一葉のマンションから学校も坂道はある・・・


「疲れたよ。

どうせなら学校のすぐ近くのマンションにすればよかったじゃん」


これは一葉のマンションに行くときに大抵言っている文句だ。

ほぼ毎回のように言っているせいで、最近はこの文句を言っても反応してくれなくなってしまった。

階段を上り、中学校のグラウンドの横の道に出ると、木陰が続いて涼しい道・・・

木陰はあるのだがセミの鳴き声が頭一杯に響き渡り、夏の暑さを一気に増幅させることとなった。



そんなことはおかまいなしに一人はしゃいでいる奴がいる。

人から見れば恥ずかしいくらいのはしゃぎかたに見えるのだが、残念ながらその姿は俺にしか見えない。


「はあ」


思わずため息が出てしまった。

その姿を見ると、とことん幽霊が羨ましくなってしまった自分が悲しい。


「どうした、翔」


こちらを振り返る一葉の顔には汗が滴り落ちている。



一方、はしゃいでいる空の顔には汗など微塵たりも見当たらない。



どうやら、幽霊は温度も感じないらしい。