「一葉さんって、いい人ですね」


はにかみながら、女の子は言った。

それを見て思わず笑ってしまい、しばらく止まらなかった。


「ようやく気づいたのかよ。

昼のときのお前、めっちゃ顔強張ってたぜ」


「あのときは・・・

分からなかっただけです」


顔を赤らめて斜め下を向きながらボソッと呟いた。

本当にこの子はからかい甲斐があって面白いぞ。


「一目惚れか」


そう聞くと、さっきよりも慌てた様子で両手を顔の前で勢いよく横に振り、辺りをキョロキョロと見渡した。

いや、それじゃ一目惚れしましたって言っているように思うのは俺だけだろうか・・・

ちょっとだけ小ばかにするように笑い、やれやれと大げさに首を横に振った。


「ほ、本当にそんななじゃないですよ」


「分かった、分かった」


一目惚れしたかどうかは別として、一葉がいい奴だということが分かって貰えたのは嬉しくなった。


「一葉はいい奴だよ。

うん・・・

俺の百倍はいい奴だ」


だからこそ、俺は・・・



そう言いかけたが、それは別に言わなくてもいいことだろうと思い言うのを止めた。

一葉がいい奴だと分かってくれればそれでいい。