四限の授業が終わった時間帯の小田急線は朝の通勤・通学ラッシュや夜の帰宅ラッシュに比べると落ち着いてはいるものの、混雑していて急行は座ることができなかった。

いつものことなので大して苦にはならないし、次の停車駅で各駅停車と待ち合わせするから、結構な人数の人が降りて座れるようになる。



新百合ヶ丘に着くと、無性に寄り道がしたくなり、ふらっと電車を降りて駅の改札口を通り抜けていた。

慌しい駅の改札口を抜けて、名も知らないミュージシャンが行き交う人たちにアピールする横を抜けて、スポーツジムの横の道を通り、並木道を潜り抜けて、スポーツセンターに着いたところで外のベンチに腰を掛けた。


「あの・・・」


女の子が声を掛けてきたが、今は少しだけ落ち着いていたかったので反応せずに辺りの景色を見渡していた。

夕陽が並木たちに所々遮られていて、ほどよい感じの日差しになり美しく見える。

ベンチから見える、駅の近くに立っているビルがオレンジ色に染まっている光景も綺麗に見えた。


「翔・・・

さん」


その言葉に空を見上げていた視線が女の子の方に向いた。


「何、俺の名前呼んでいるの」


女の子はまた焦って、落とした視線を左右に何度も往復させた。

本当にこの子は・・・


「いや、その・・・

さっき一葉さんがそう呼んでいたから」


それだけ言うと、また女の子は黙ってしまった。

俺から特に話題を切り出すつもりはないから、しばらくこの沈黙は続くだろうか。