「でもよ、そいつ・・・

いや、その子・・・」


言葉に詰まり、困った表情をする一葉を見て、次に聞いてくる言葉はだいたい分かった。

だけど、一葉はそういうことはまず自分で考えてから聞いてくる奴だから、しばらくその思考中の姿を眺めることを楽しもう。



右上・・・



左上・・・



上・・・



三つの方向に顔を上げながら、困った表情をする一葉は見ていておかしく、このときは普段は見下しているような態度に取られる奴も少し可愛らしく見える。


「なあ、男?

女?

どっちなの」


「はい、一葉くんギブアップ」


そう言うと、一葉は困った表情から悔しそうな表情に変わり天を仰いだ。

今の一連の動作を見て、女の子の表情が少し和らいだ。


「男」


そう言うと、和らいだ表情がまた一変して焦っている。


「ちょ、ちょ、ちょっと」


その慌てぶりを見て、もう一度笑う。

一葉と女の子のこういうところ、どこか二人似ていると勝手に思い、一葉の肩を軽く二度叩いた。


「お前ら、似ているよ」


「あのっ。

わ、わ、わた、わたし」


「分かっているよ。

冗談だよ、冗談。

女の子だよ」


今度は膨れっ面をして、少し怒ったような表情になった。


(やべえ。

この子、おもしれえぞ)