テストが終わり、教室を出ると一目散に隣に座っていた男の隣へと向かった。


「一葉、さっきはサンキュー」


一葉知孝(かずはともたか)


一年の時に履修した授業で仲が良くなった親友だ。

身長は俺よりも高く、常に眠そうな目と鼻声がいい加減な奴だとか、人を見下しているように思われがちだが凄くいい奴だ。

それだけにかなり勿体ない。


「別に大したことしてないって」


そう言いながらこちらを振り向く一葉はやはり眠そうな目をしていて鼻声だった。

俺の横にいる女の子も少し仰け反り気味になってしまっている。

やはり第一印象は良くないのが一葉なのだ。


「それにしても、いきなり『サンキュー』とか言い出すからこっちが焦ったつうの。

どうせ、あれだろ。

また、幽霊か何かに憑いてこられたんだろ」


一葉は俺が霊感が尋常じゃないくらい強いということを知っている数少ない人物だ。

一葉は霊感がないからそういったことに無関心で怖いとも思ったことがないという・・・

いかにも一葉らしい


「これからまた独り言が増えるかもしれないから、そこらへんはよろしく頼むよ」


「了解」


さっきのように俺が幽霊と話すときは独り言のようになってしまう。

もちろん、誰にも聞かれないようにはしているが、やはりどうしても聞かれてしまうときがある。

そういう面倒な問題をいつもフォローしてくれるのが一葉だ。

こんなことしてくれる奴なんて、そうそういるもんじゃない。