(やべえ、やっちまった)


そう思っても、この状況ではどうすることもできない。

焦ったら余計に怪しまれるが、平然としていてもどこかおかしい気がする。

一体、この状況で俺はどういった素振りを見せればいいのだろう。


「ほら、お前消しゴムも一緒に落としているぞ」


左隣に座っていた男が小声でそう言って俺に消しゴムを差し出してきた。

小声だが、確実に視線を注いでいた教授に聞こえるように、俺にとってはわざとらしい仕草だと言ってもいい。


「サンキュー」


やはり、俺も同じような仕草をして消しゴムを受け取った。



それを見た教授は少し呆れた表情を見せ、また黒板のほうへと足を進めた。

とりあえずは、どんな形であれこの場を切り抜けられて助かり、テストへと戻った。