それからというものの、女の子は沈黙を守ってくれた。

それにより、俺は痛い子ではなく普通の大学生へと演じることができた。



いや、霊感が強いだけでもともと至って普通の大学生なのだ。

今はみんなが見えない人物が見え、みんなが話せない人物と話せているだけ・・・

なのだ。



一限の授業が終わり、二限の教室へと移動するとき、ちょうど人気の少ない六号館の前を通りかかったので中に入った。


「ここだったら、喋ってもいいぞ」


あまりにも人気が無さ過ぎて、その声が廊下に響き渡り慌てて教室に入った。

教室に入ると女の子は嬉しそうにこちらを向いていた。


「勘違いするなよ。

別に可愛そうだとか、悪いとか思ったわけじゃないからな。

このままお前が機嫌悪くなって、とんでもない幽霊になられたらたまったもんじゃないと思って・・・」


俺、何を恥ずかしがっているんだろう。


「ありがとうございます」


満面の笑み。



俺、この笑顔に弱いかもしれない・・・



明るくて、満面の笑み。

だけど、どこか心の奥は寂しさがあって、弱々しくて背中を押したら前のめりになって倒れこみそう。

だけど、そのなかにもわずかに光るものがあって、繊細すぎて油断するとそれを見逃してしまいそうな・・・

自分で何を考えているのか分からなくなってきてしまった。