大方の仕事は終わり、時計を見ると9時になろうとしていた。

残っているのは私と主任の沼久保くんだけ。

「お疲れ様」
私は自分のと一緒に沼久保くんの缶コーヒーも買って渡す。
「どーも」
沼久保くんは私より一つ年下だが、すでに家庭を持っていて仕事もできる。

独身ではないと知った女子社員は一様にガッカリとする。

「手伝うことある?」
「え、いいんすか?」

もうここまで来たらあと少し残業したところで変わりはない。

「助かります。でも桜川さん、玉木達と合コンだったんじゃ…」
「うん、でもバイトの千晴ちゃんに行ってもらったから大丈夫」
私は苦笑いしながら沼久保くんから仕事を受け取る。
「そーなんすか?」
「そ。それよりも沼久保くんこそ早く帰りたいんじゃないの?」
「そーですね」
私と話ながらも沼久保くんの仕事の手は止まらない。
「俺が尊敬してる人はもっと仕事してるんで」