本社なんて入社時の新人研修以来だ。

本社勤務は基本スーツ。
店舗勤務は制服があるので通勤は私服でOKだ。

クローゼットの奥にしまってあったスーツを慌てて取り出した。

幸いにも最後に着た時から体型は変わってなく着られた。

研修は人事部の教育担当者、平林佑久さんからレクチャーを受ける。

平林さんは私と同い年で気さくな感じの人だった。

「チーフ研修で同い年の女子社員が来るって珍しいし、人事部の女子はみんな僕よりも年上だからなんかテンション上がっちゃうな〜」
午前中の研修を終え、平林さんがニコニコと言った。
「桜川さん、昼飯どうするの?」
「外に出ます。1時迄に戻ればいいんですよね?」
「うん。それなら僕、ランチにいい店知ってるから一緒に」
「すみません。同期と約束していて…」
そう謝ると平林さんは少し残念そうにしたが、笑顔は崩れない。
平林さんと一緒に研修室を出ると高原くんが待っていた。
「お疲れ様」
「お、お疲れ様です高原部長!」
平林さんが緊張した声になり、背筋もピンと伸びた。
私はそんな平林さんにお辞儀をした。
「また午後、よろしくお願いします」
平林さんは「え?」という顔をして私と高原くんを見比べた。