「せーんぱい、結婚式どうでしたかぁ?」
昨日、日曜出勤を代わってくれた後輩の玉木レイが朝礼の後、声をかけてきた。
「昨日はありがとね。結婚式きれいだったよ。」
「いーなーお医者さん。」
そっちか?!とツッコミそうになるけど仕方ない。レイちゃんは婚活、合コンが趣味みたいないい男ハンターなんだから。
「お医者さんのお友達と仲良くなってくれました?」
肉食女子の目がキラリと光る。
レイちゃんは日曜出勤代わる代わりに、結婚式の新郎側出席者(独身医者)と知り合いになり合コンをセッティングしてほしいと言っていたのだ。
「医者ってより高校時代の友人と同じ席だったから…」
レイちゃんが「えっ?」て顔になる。
だけど私が都内一の進学校の名前を告げると再び目に光りが宿る。
「名刺もらったから昼休み見せてあげる。」
「先輩大好き〜」
レイちゃんは大袈裟に抱き着いてくる。
こんな後輩だけど、仕事はきちんとやってくれるしどこか憎めない。
「桜川、玉木。ふざけてないで仕事しろ。開店まで時間がないぞ。」
その声にレイちゃんは私からパッと離れる。
「はーい」
そうチーフに返事しながらレイちゃんは明らかに眉間にシワが寄っている。
チーフはそれに気づかない振りで私を見た。
「桜川、ちょっといいか。」
「はい。」
チーフ、坂井直之に手招かれ、私はレイちゃんに軽く手を振った。
レイちゃんが坂井チーフに見えないようにガッツポーズをくれた。
それに私は苦笑いするしかなかった。
レイちゃんや職場の人達には言っていないが、坂井チーフは私が今付き合っている彼氏なのだから。