いつものように、インターホンが鳴る。

今日は珍しくケーキの箱なんか持ってる。

「嫁も子供も実家に帰ったんだ」
いつも以上の上機嫌はそういう訳か。

夕飯を食べ、デザートのケーキを食べ、直之がシャワーを浴びる。

だけど私は気分が乗らない。

この間、この部屋のベッドで私は違う人と寝た。
「これって浮気なのかな?」
聞こえない位の声でつぶやく。

あの温かなぬくもりはなぜか今も忘れられない。

「オマエもシャワー入って来いよ」
直之は自分の家のようにくつろぐ。
私は仕方なくシャワーを浴びに行く。

何だか気が乗らない。
そんな事を言ったら直之、機嫌が悪くなりそう。

なんだかこのまま直之に抱かれたらあのぬくもりを忘れてしまいそう。

ゆっくりとシャワーを浴びた。
直之が寝てしまっていることを願って。

だけど起きていた。

「オマエ、これどういうこと?」
直之が持っているのは私の携帯電話。
画面は高原くんからのメール。

『昨日は本当にゴメン。言うの忘れてたけど、桜川さんの朝ごはんおいしかった。今度は理性を保つからまた懲りずに飲みに行こう!(笑)』

あの日、家を出た高原くんがくれたメール。

私は自分の顔が強張るのがわかった。
「なに勝手に人のメール見てるの?!」
直之から携帯を引ったくる。
だけどそのまま腕を捕まれ、ベッドに押し倒される。

「オマエ、男を連れ込んでるのか?!」
直之は鬼の様な形相で私に覆いかぶさる。

私はその直之を怖いと思うよりも怒りでいっぱいだった。
「関係ないでしょ!自分の事を棚に上げておいて何言ってんのよ!」

その瞬間、強い力で頬を殴られた。

そして私は直之に無理矢理抱かれた。