高原修斗は6年前、大卒で入社。
ちなみに私は短大卒で入社したので同期とは言っても年は2つ違う。

高原くんは高校時代からこの会社でバイトしていたのと真面目で優秀、国立の大学出ということで10年に一度の逸材と言われている。

その期待通りあれよあれよと出世街道を駆け上がり、今や28歳にして本社営業部の部長。

入社したての頃はキラキラ輝いていて細身でスーツもシャツも新品でネクタイも曲がっていなかったし、くまのぷーさんではなかった。

入社研修で同じグループだったけれど6年間会うことはなかった。

「言うね、桜川さん」
おじさんと言われたにも関わらず高原くんは気分を害した様子もない。

『高原営業部長ってなんか恋愛対象にならない』

独身エリートなのに女子社員からそう称されてしまう、惜しい男。

沼久保くんと仕事の話に入ったので私も仕事に戻る。

そして時計が10時を回る頃。
「終わった〜」

「高原さん、桜川さん、ありがとうございました」
沼久保くんが私たちに頭を下げた。

「桜川さん、メシは?」
高原くんに聞かれ私は夕飯を食べそこなったことに気付く。
「俺もまだだから行かない?」
「桜川さんだけっすか?!」
「沼久保は家で奥さんが待ってるだろ」
沼久保くんは口を尖らせる。
「高原くんと沼久保くん仲良いね」
私はつい笑ってしまう。
「高原さんは俺の大学の先輩なんっすよ」
「へー」
沼久保くんもそういえば期待のエリート候補だった。

「じゃあ俺は帰りますんで、同期同志親睦を深めてくださいよ」
そう言って沼久保くんは帰って行った。

私と高原くんは駅に向かって歩く。
「桜川さん何食べたい?」
「牛丼でも何でも」
「桜川さん…」
なぜか高原くんに飽きれられてしまった。