そして、どうせ無理やりにその婚約者の所に連れてかれてしまう。
顔も見た事ないどっかの女の所へ。
「……婚約者って、ねぇだろ」
この間、20歳になった俺にはもう驚き以外の何でもない。
ふうと息を吐き、またカクテルを飲むと
「何?徹平に婚約者できたの?」
梨恵子は興味深い顔をして、赤いマニキュアが塗ってある指をカウンターに添える。
「ああ」
「柊家の御曹司の相手なんだから、さぞかし有名なお家柄なんでしょうね」
「…んー、あーノグチだ。確かノグチ病院の娘とか言ってた気がする」
「え……」
その時、梨恵子の瞳には戸惑いが見てとれた。