「それはタブーだからな」
梨恵子が飲んだカクテルの味が口の中に広がって、俺は舌でその味を嗜んだ。
「あなたのオトウサマ、偉い人だものね」
「…あぁ」
俺にとっては、クソみたいな親父だ。
威厳が高くて、俺に自分の出来なかった事を押し付けてきて……自分勝手に行動する。
今日だって、久しぶりに家に帰ってきたかと思えば…
「今度、お前の婚約者に会うからな」
そんな事を言ってきた。
それで、俺は勿論
「は?何言ってんだ」
反論する。するに決まってんだろ。
今まで婚約者なんて存在自体俺は知らなかったんだ。それなのに、急にそんな存在を知らされて会うだと?
まったく、ふざけてる。