「あ、うん。美味しいよ。」


そう言うと、ナオトくんはへへっと笑った。


「二ノちゃんの本名は?」

「私は、ニノミヤユウ。」

「ああ、それで二ノか・・・漢字は?」

「ニノミヤは、数字の2と、お宮の宮。

 ユウは、自由の由だよ。」


「そっか。オレはマツカワナオト。

 松と川。それにまっすぐの直に、音。」


「音?」

「そう、サウンドの音。」

「へえ、かっこいいね。」

「そうか?」

「うん。バンドやってるし、合ってる。」

「そうだな。」


「・・・・・。」

「・・・・・。」


やばい・・・二人とも黙ってしまった。


「あの、さ、直音くんの、好きな食べ物って何?」


・・・つまらない質問をしてしまった。

言ったそばから思った。


かああ・・・って顔が熱くなる。


「オレ?オレは・・・中華料理とかかな。」


直音くんは、素直に答えてくれた。


「二ノちゃんは?」

「私は・・・オムライスかな。」

「へえー。」


ご、ごめんね、どうでも良いよね・・・。


「あ、オレ、もうすぐ楽屋行かなきゃ。」

「あ、うん。ほんとだね。」

「じゃあ、また後で。」


直音くんは、そう言うと走って行った。


・・・じゃあ、また後で。


頭の中で、何度も直音くんの言葉をくりかえしながら。