いつの間にか夢はおわっていて、次に目を開いた先には灰色の天井が見えた。
異様に圧迫感のある天井に押しつぶされるような気がして、とっさに体を起こした。


「やっと起きたか、寝ぼすけ少年」

「先生…………」


まだ寝ぼけて、記憶の整理ができていない。


「飲みなさい」


僕に差し出されたのは、白いマグカップに黒い液体が満ちたものだ。

コーヒーだろう。


「ありがとうございます」

「もう遅いから、飲んだらお帰り」

「………はい」


そこで初めて、自分が保健室で寝ていた事を思い出した。
そして、部屋全体が窓から漏れた紅い日差しで溢れていることに気がついた。


夕方まで寝てたのか……


全身の痛みと、異様な眠気がなくなっていて、とても晴れた気分だ。

ズズッとコーヒーを飲む音が、静かなこの空間に鳴っていた。


「だいぶ顔色もよくなってきたね」

「………え?」


そんなに顔色が悪かったのかと、マグカップを持っていない方の手で顔を触った。


「起きた君の顔、すごい青白くてビックリしたよ」

「そうですか……」


夢では、さっきまで極寒の草原にいたんだっけ。

異常にハッキリした夢だったのか、忘れるどころか頭から離れない。

あの少女は、誰だったのだろうか……………