涼しい風が彼女の髪を優しくなびかせ、初夏の日差しが銀色のそれを白く輝かせている。
「世界は俺のせいでやり直されてるってことだよな? それってまずいのか?」
「とても………。人の命は限られていて、決められています。逆にその運命が変われば、いろんな世界の均衡が崩れてしまいます」
「つまり、人がいつどこで死ぬか決まっているってことか?」
「はい」
なんてでたらめな話だよ。
半信半疑できいてたものの、彼女の真剣な眼差しに、すっかり信じ込まされた。
そもそもなんで、俺はそんなに早く死にまくってるんだよ…………。
「わかりません。ただ、世界はあと一度でもリセットされれば、人はこの世からいなくなるでしょう」
「なんで!?」
「そうする事がこの世の¨最善の形¨であるからです」
「最善の形…………」
「神は人類の発展していく様を見ていた。あらゆる事柄を追求していく貪欲さに興味を抱いた。彼等はいつか自分のいる¨神¨という存在に行き着く可能性があるかもしれないと……」
「かみ…………」
「神は全知全能であり、何よりも尊い方。ただ全知全能でもわからない事がありました。
………自分がここに存在した理由」
「神は自分の生まれた時の記憶はないのか?」
「神に記憶はないのです。神は形ある存在ではないから」
いよいよ難しくてついてけなくなった僕は、結論を求めた。
「……簡単に教えてくれ」
「あなたが死ねば世界は終わる。神は人類からなにも得られない存在と判断したから」
勝手な神だな。俺達の歴史や文化や思いすべて無にするのか………。
「だから…………あなたは生きなければなりません」