「で、その子はどうするつもりだ?」

「…………………」


¨その子¨もとい命の恩人「夢の美少女」は、金魚のフンの如く俺の背中にぴったりくっついて学校まできていた。

ちなみに名前は未だ不明のままである。


「りんご食べたいの」


夢では大人びた口調だったはずが、中身がすりかわったかのように幼稚な文しか並べてこない(りんご食べたい以外喋ってはいないのだが)。


「今日俺の弁当りんごはいってるぞ!」

「食べる」

「タイミングよすぎだろっ」

「細かいことはきにすんな、製作上の都合だ!」

「製作上?」

「¨母ちゃんの都合¨の聞き間違いだからきにしないで」


しれっと危ない事をいいだすなよ。

真人は、そんなことお構い無しにカバンからりんごを出してきた。

弁当箱ではなく¨りんご¨を………………


「なんで丸ごと?」

「母ちゃんが寝坊したからだ!」


なんとアバウトな母ちゃんなんだろうか。まぁ世界にそんな母ちゃんくらいいないと成り立たないのかもしれない。


¨夢の少女¨はさしだされたりんごを嬉しそうに受け取り、舐めた。

続いて…………舐めた。


「変わった食べ方するんだな……………」

「美味しい……食べる?」

「ぜひっ!」

「やめろ真人っ!!」


……………遅刻しているのに実にのんきな登校であった。