マイルド・ガールとワイルド・ボーイ

『次は新入生代表の言葉です。新入生代表、幹居 連右』


とうとうオレの出番がやって来た。


「ハイ」


言われた通り返事をして、ステージに行こうとしたが……


「「「「キャーーーーッ!!」」」」


「ウソ!メッチャカッコよくない!?あの新入生!!」


「アレで入試トップだったの!?スゴーーイ!!」


返事をした瞬間女子が騒ぎだし、先輩まで喚きだした。


『し、静かにして下さい!!』


センセ………オレ悪く無いから、怒んないで下さいね。


女子の黄色い声が飛ぶ中、何とかステージに上がった。
今一応入学式だよな?


こんな騒いじゃって、いいのか?


『美しい桜の花が咲く中、私達は高校という新しい場所に一歩足を踏み入れ………』


挨拶の紙を読みながら前を見てみるが、新入生も在校生も、女子生徒は目がハート状態。


男子生徒は何とも言えない表情でオレや女子達を見ている。


………笑いたくても、笑えない場面だった。


『これから先、たくさんの……』


――――って、アレ?


あの女だけは………不思議そうな顔でオレを見ている。


オレは1人…………他とは違った雰囲気を持った、女子を見つけた。
代表の言葉を言い終わり、また黄色い声があがる状態で席に戻る。


たくよ……


高校生にもなって、静かに出来ないのかよ、この人達は。


オレはチロッと目を動かして、さっきの女を見た。


なんか………“ウルサイなぁ”って表情をしてる。


――――ヘェ………変わった女もいるんだな。


その時……入学式では、ただ単にそうとしか思わなかった。


………これから先、この変わった女がオレの退屈な日々を変えるなんて――――……


イヤ……


「変えてくれる」なんて―――――……


思っても、みなかった………
遂に始まりました、入学式!!


周りにいる皆は中学校の時と比べると、大人っポイ人ばっかり。


男の子はカッコよく、女の子はキレイ。


自分が子供に感じた。


私、高校でちゃんとやって行けるのかな……


さっきまで夏葉と琴音と同じクラスになれて浮かれてたのに、急に不安になって来たよ………


でもでも、今はまだ入学式の途中!!


意識をキッパリと、現実の世界に引き戻した。


あ……そう言えば………


夏葉と琴音が言ってた…えっと………名前……そうそう、幹居君。


“幹居連右”って人、一体誰なんだろ??
確か夏葉が“後で分かる”とか言ってたよね?


この入学式で分かるの……かな?


そんなこんなで、在校生代表の言葉までが終わった。


この次に始まるのが、新入生代表の言葉だ。


新入生代表って事は…入試トップだったって事だよね……


スゴイよ私には絶対ムリ!!


大の苦手な数学が3より上になったの……1度も無かったし。


受験勉強、メッチャ頑張ったもん!!


『紀香!この問題また同じ所で間違えてるっ!!』


『え~~~?』


『ここはこうするんだよ♪』


琴音と夏葉には、大変お世話になりました。
代表が誰だか全く知らないけど、優秀な頭脳を分けて欲しいと思っちゃった。


一度でいいから、“得意科目は数学です”とか言ってみたい………


英語でもいいかもね!!


司会の先生がマイクの前に立つ。


どんな人なんだろ……入試トップさんって。


ワクワクしながら、紹介を待った。







『―――……新入生代表、幹居 連右』





…………ん?


今………幹居って言ったよね?先生。


「ハイ」


誰か、男の子の返事が聞こえた、次の瞬間―――……


「「「「キャーーーーッ!!」」」」
物凄い女子生徒の歓声が出て、心臓が止まるかと思った。


な、何なのよ~~~!!もう!


クラス分け表の夏葉の時もそうだったけど、私小心者なんだからぁ!!


オバケも妖怪も苦手な私を、ビックリさせないでよ!


「カッコイイーーー!」


「ステキィ、幹居くーーーん!!」


「こっち向いてぇーーーー!!」


…………どうやら新入生代表が例の「幹居君」で、女の子達は彼を見てカッコイイって言ってるみたい。


そんなに皆騒ぐ程、カッコイイ人なのかなぁ………?


私は目線を女子大注目!のステージ上に移した。
――――ワッ!


本当だ!!確かにカッコイイ!!


髪は薄過ぎず、かと言って濃過ぎでも無いキレイな茶髪。


顔のパーツは全部整ってて、誰が見てもイケメンと納得するだろう。


背も175位はありそうだし、同じ人間とは思えないよ!!


で、入試トップって………神様ズルイィ~~~~!!


あまりにも差がありまくり~~~の幹居君を見て、また半泣きになりそうだよ……


あんだけ美少年でその上頭も良かったら、モテて大変だろうねぇ…………


ショックが大きくて、思わず口調がおばさんっぽくなってしまった。
ああ、だから夏葉も琴音もあんなにテンション高く騒いでたんだ。


2人のあの興奮振りの理由がやっと分かったけど………


『今日この日、私達は……』


ステージでスラスラ文章を読んでいる幹居君を見ながら、私は―――……



“やっぱ知らないなぁ~~~~”



……と、思っていた。

(↑ウォ(オ)イ!!)


だってしょうがないじゃんっ!!


本当に、今の今まで知らなかった人なんだから!!


他の女の子達は目がトロ~~ンとしてるけど……


ごめんなさい幹居君!!


私アナタの事、全く知らないです!!