マイルド・ガールとワイルド・ボーイ

「紀香、真逆の方見てる」


「…………」


ククク……カワイイな。


恥ずかしそうな紀香の隣に行って、頭に手を置く。


「ここ、勇も知らないんだぜ?お前に初めて言った」


「神蔵君も?だったらなんで私なんか……」


「昼休みのお礼と謝罪。ありがとな、心配してくれて。後からかってごめん」


そのまま頭を撫でた。


「――――…ううん。私も何だか………ごめんね?」


苦笑する紀香―――……よしっ、もう平気だろ!!


~~♪~~♪~~


「あ、私のケータイだ……メールか」


紀香がケータイを取り出した。
目に入ったのは………白いケータイに付いた、ビーズのイルカのストラップ。


「紀香………そのストラップ………」


オレが水族館で昨日買ったヤツだ……


「う、うん。ケータイに付けてみたの!!ありがとね連右っ!!」


また礼を言われた。


紀香に抱きしめられるし、嬉しい言葉言われるし、ストラップもちゃんと付けてくれてるし………


いい日だったな……今日も。


「じゃあね、連右ーーー」


「またなーー」


紀香と別れてからも、ほのぼのとした気持ちは残っていた。


夢の事も、気にしないでおこうと決めていた。
――――だけど。


オレは気にしなければいけなかったんだ。


『連右の……ウソツキ』


あの夢は―――……前触れだったのかも、しれない。


『努力するって言ったじゃない………なのになんで、どうして…………っ』


この時……ちゃんと悪夢を気にしていれば


オレがもっと大人だったら


あんなに………君を傷つけないで済んだのか……?


「ただいまーー」


「おかえりーーー」



―――――もうすぐオレと紀香の間に、嵐を巻き起こすヤツが来るなんて、全く知らないで



オレはのん気に、笑ってた―――――……
5月も終わり、6月に突入。


急に暑くなって来たから、参るんだよね。


「歴史の宿題やって来た!?紀香!」


「うん、やったよ?どうしたの夏葉」


席に着いたら、夏葉が急いでやって来た。


「良かった!!あのさ、写させて!私忘れちゃったのっ」


ええ!?


「夏葉どうしたのよ。アンタが宿題忘れるなんて、珍しいわね」


今日は長い髪を右横に1つで縛ってる琴音が、驚いて言った。


琴音の言う通り、夏葉が宿題忘れるなんて、滅多に無い。


3人の中で1番忘れるのが多いのが――――……私(泣)
「あ、ちょっと……嬉しい事があってね?それで………宿題忘れてて……」


夏葉がモジモジしながら言った。


「夏葉、トイレ行きたいの?」


私がそう言うと、夏葉も琴音もずっコケた。


ハレ?私、何か悪い事言ったのかな?


「違うわよ!」


「この天然&鈍感!!ツッコむこっちの立場にもなりなさい!!」


え~~~!?なんで怒られるのぉ!?


「ねぇねぇ夏葉っ!!“嬉しい事”って神蔵君関係でしょう!?」


…………あ~~~、そっかそういう事か!!


夏葉は神蔵君に、少しずつだけどアタック中。
神蔵君は唯一連右と私の事を知っていて、明るく皆を励ますクラスのムードメーカー。


連右とコンビで、人気もあるんだ。


「うん……昨日部活帰りに、“これから時間が合ったら一緒に帰んない?”って………//////」


「ヒャア~~~!!」


「一歩前進したわね夏葉!やるね神蔵君も!!」


昔から優しくて、穏やかに私を見守ってくれた夏葉。


夏葉と神蔵君、本当にお似合いだと私は思う。


ファイト、夏葉!


ちなみに琴音の方はと言うと


『今は部活!!ま、いい人現れたら考える!!』


―――らしい。
親友の幸せを願い、席でニコニコしていると………


「福田さん」


隣の連右が、話しかけて来た。


「何?連……幹居君」


2人の時は“紀香”と“連右”って呼び合ってるから、変な感じがする。


呼び捨てにし始めた当初は―――…“連右”の方に違和感があったのに。


「………友達の応援するのもいいけど、自分の事も考えてね?」


周りにクラスメイトがいるから、コソッと言った連右。


「ヘッ………ああ……うん//////」


俯きながら答えた。


私達は、まだ………“恋人”って関係じゃない。
だけど確かに、『幹居 連右』って存在は、私の中で大きくなってる。


「ハーーイ、皆ーーー席に着いてーーー」


宮城先生が教室に来て、皆が席に座った。


ちょこっと左隣の連右を盗み見る。


サラサラの茶髪に、長いマツゲに囲まれたキレイな目。


鼻も高いし……カッコ良過ぎて、“私でいいのか”と考えちゃう。


でも、もし私が…………本っっ当に連右の全てを受け入れようって決めれる日まで連右が待ってくれるなら。


「今日は皆に報告があります!」


連右―――お願い。


その時まで、待っててくれる?
“その時”は、もうすぐ訪れるハズだった。




「今日からA組に、新しいお友達が加わります!!」



―――――宮城先生が、こう言うまでは。


新しい……お友達?


「マジ!?先生ソレって転校生って事っ!?」


「ワーー!女の子ですか?それとも男の子!?」


どうやら“転校生”が来るらしく、男子も女子もお祭り騒ぎに。


こんな半端な時期に転校生なんて……


それでも新しいクラスメイトに、私も興味津々!!


どんな子だろ!?


「ウフフ♪相ケ瀬くーん。入っていいわよ~~~!!」