入学式以降、彼は一向に彼女を作らなかった。
なぜ作らないのかと、あたし達は気になっていた。
―――理由は、彼女が既にいたからだった。
あたしのツレが、
『誰なの!?』
と問うと、
『可愛くて、明るくて、優しい奴だよ』
湊斗は愛おしそうに言った。
その姿を見たとき、すごく苛立った。
心の中で、あたしは『絶対彼女にお前は似合わないと言ってやる』と思った。
それほど、彼のことを好きになってしまっていたのだ。
『それだけじゃ誰だかわかんないよ!』
『…仕方ねぇなぁ。
じゃあスペシャルヒントな?
…髪がセミロングで、
いつもマリンヘアにしてるやつだよ』
それを聞いた瞬間、ピンと来た。
『…え…』
その彼女に該当する人は1人しかいない。
『陽愛ーっ!』
『なにっ?憂依』
彼女しか。
陽愛しかいないじゃない。