アメリカに行っていたと言うことも、
手術をしたということも、
湊斗が病気を抱えていたと言うことも何もかも、私は知らなかった。

……こんなので、私は“彼女”と威張れるのだろうか?
……“彼女”だって言えるのだろうか?


……湊斗。

私には自信がないよ。
もう、あなたの隣にいることはできないのかな…?
あなたの隣に立つことは許されないの…?



「…湊斗が記憶をなくしているということはないのよ、ね?」

「えぇ…」

「……そう、ですか…」



湊斗。
これで私は決めたよ。

あなたがさっき、私を見ても何も思わなかったのは、
何も言わなかったのは、私のことをもう忘れていたから…何だよね…?

だったら私はもう傍には居られない、居てはいけない存在なんだよね?
私にはもうあなたの隣に立っていいという資格がないっていうこと…そうでしょ?


なら、私はもう潔くあなたを忘れる。

……だから最後に、私に決心させてよ…。



「…なら、お願いがあるんです」

「え…?」

「最後に一回だけ、話をしたいんです」

「…“最後”…?」