「私、『好きだよ』とは言ったことがあったんだけど、湊斗に私から『私も愛してるよ』って言ったことが一度もなかったの」



一度も、なかった。

それに気付いたのは、湊斗が亡くなったと聞いたあとで。

そして、後悔する原因となったのは新学期のことだった。



『おい…片倉』

『…なに?』



私は廊下を歩いていると、湊斗の友達に呼び止められた。



『お前、湊斗にちゃんと言ったか?』

『…え…何を?』

『…お前まさか…言わなかったのか?』

『…え…』

『アイツ…湊斗はな、生前、…今更言ってもおかしいのかもしれないが、
一学期の最後らへんに、
《陽愛にまだ“愛してる”って言われたことがねぇんだ》って落ち込んでたんだよ』

『え…』

『…まぁ大好きって言われてるし、嫌々付き合ってる訳でも、嫌われている訳でもないんだろうがって…』

『…う、…そ…』