それを言われてしまうとこちらはぐぅの音も出ない。
困ったようにすごすごと下がってくるあたしをみてリサちゃんが申し訳なさそうに謝ってきた。



「つぐみさん、ごめんなさい」


「いいよ、いいよ。なんでリサちゃんが謝るの?」


「あれ……あたしのモトカレなんです。あたしちょっと行ってきます」


「え…?行くって何しに?……え?リサちゃん…?」



あたしの言葉も聞かずにリサちゃんはさっきのわがままそうな男のもとへと行くとごにょごにょと耳元で囁いて席を立たせた。
男と一緒に来た女はフン、といったようにそっぽを向く。
男はリサちゃんに連れられてホールから少し離れたキッチンの方へ行った。
周りのお客様へのリサちゃんなりの配慮だろう。
ここはリサちゃんに任せることにしてあたしは自分の仕事に戻った。



だけどしばらく経ってもリサちゃんは戻ってこない。
あたしひとりでは回らなくなってきてリサちゃんの様子を見ようとキッチン前に行った。