手代木と水島は牢の入り口の脇にあった木刀を武器にした。
「俺はとりあえず妹を見つける。
君は逃げ…」
手代木が言い切らないうちに水島が言った。
「私も妹さんを見つけるのに協力しますよ。
逃げるのはそれからです」
「分かった」
二人は地下から一階へと上がって行った。
一階の廊下を進んでいくと、曲がり門に来た。
その角から廊下を覗くと見張りが歩いて来た。
彼らは身近な部屋に入った。
暗かったが、目が慣れてくると、そこは武器庫の様だった。
水島は目を輝かせた。
「色々、弾薬がありますよ。
暴れてやります!」
水島は爆弾を懐に入れた。
再び、部屋の扉を開けて廊下を見ると、誰も居なかった。
二人は部屋を出て廊下を進んだ。
何回目かの角に来たとき、先を覗くと見張りが動かずにいる部屋が見えた。
「あそこ居ると思う」
水島が言った。
「私が見張りを誘き出すからその隙に、妹さんを助け出してください」
水島がわざと見張りに向かって姿を出した。
見張りは声を上げて仲間を呼びながら水島を追いかけて行った。
手代木は見張りが去った後の部屋の扉を開けた。
中には奥に椅子に座った妹と3人の浪人がいた。
入って来た手代木を見て妹が叫んだ。
「お兄さま」
家具の陰にいた首藤が妹の脇に立ち命令した。
「そいつをやってしまえ」
浪人達は刀を抜いて手代木を取り囲んだ。
手代木は木刀を構えた。
一人浪人が襲って来た。
手代木は刀をかわすと木刀で打った。
浪人は悶絶して倒れた。
残りの二人は顔を見合わせて、一緒に襲いかかった。
手代木はそれをスルスルとかわし腹と背中に木刀を入れた。
バタバタと二人が倒れた。
首藤が腰のサーベルを抜いて、葵の喉元にあてた。
首藤が手代木を威嚇した。
「そこまでだ。
武器を捨てろ」
手代木は仕方なく木刀を床に置いた。
「そのまま、手を頭に当てろ。
そして壁に向かって歩け」
手代木はゆっくり手を頭に当てた。
目で首藤の隙を探った。
首藤がイライラして言った。
「早く壁に行け。
そして、壁に頭を押し当てろ!」
手代木はゆっくり壁に向かって歩き出した。
首藤は葵の腕を掴み、手代木の後ろを通って部屋から出ようとしていた。
ドカーンという音と同時に屋敷全体が揺れた。
葵がその隙を見て、首藤の手から逃れた。
手代木は落ちていた浪人の刀を拾った。
逃げてきた葵が手代木の後ろに隠れた。
首藤が驚いて言った。
「何が起こった!」
首藤が手代木に剣を突き出した。
「手代木、こうなったら、妹共々あの世に行ってもらう」
首藤がじりじりと間合いを詰めてきた。
「ハーッ」
気合いと共に首藤の剣が突き出して来た。
手代木は間一髪でよけたと思った。
右腕にかすった。
うっすら血が滲んできた。
「西洋剣術か」
「どうだ。西洋剣術は、間合いがはかれまい。
串刺しにしてやる」
首藤はまた突進してきた。
突きの早くすんでで避けるのが精一杯だった。
首藤の剣はほとんどが突きだった。
しかし、速さが早過ぎて、手代木は防戦一方だった。
首藤がニヤニヤしながら言った。
「どうした。
反撃して来ないのか。」
手代木は壁を背にしてしまった。
「もう、後がないぞ」
首藤が剣を突き出した。
剣が壁に当たった。
壁に穴が開いた。
手代木は何とか避けたが、脇腹に傷を負った。
「その傷では、もう、早く動けまい」
手代木は肩で息をした。相手はまだまだやれそうだった。
手代木の足を先程倒した浪人が掴んだ。
「しまった!」
「放すなよ」
首藤がそう言いながら剣を振り下ろしてきた。
手代木は肩を切られたが、致命傷は避けられた。
中腰で刀を首藤に向けた。
首藤が言った。
「何だその顔は、突きだけだと思っていたのか?
そろそろ、限界みたいだな」
手代木はどうしたら良いのか分からなかった。
「お兄さま。
」