「ちょっと作りすぎちゃったかな……あはは」

「間違いなく、ちょっとってレベルじゃねぇっすね。ある意味、悪意すら感じかねないです。
あっ! 成る程。これから百合さんの友達が来てパーティー開くんですね。だからこんなに多いのかぁ。そっかそっか、俺と百合さんでこんなに食べれるわけないですもんね」

「………………いじわる」


約束の昼休み。

今、私と貴志の目の前にあるのはお弁当の重箱――三つ。

量的には沢山食べるお父さんがいて四人前。普通に考えて五人前。

昨日は頑張った。自分を褒めてあげたいくらい頑張った。でも……頑張り過ぎた。


先ずは自分が作りたいものを作って、次に貴志が好きそうな物を片っ端から作っていった。

そしたら段々、とんでもない量になっていて、こんな結末になっていたのだ。

そう、最初の時点で私の頭の中に適量という観念が存在していなかった。気付いた時にはもう時、既に遅し。

正直、これでも減らした方だ。各品を二人分づつ詰めてこの量。我ながら何て偉業を成し遂げたのだろうと思う。


「無理して食べなくて良いからね。貴志が食べたいだけ食べてくれれば私はそれで良いから」

「あの……それ分かって言ってます? そんな事、言われたら残すに残せないんですけど」

「じゃあ全部食べなさい」

「命令っすか!?」


渋々と料理に箸をのばす貴志。


「あ、普通に美味しい」


その言葉に思わず顔を綻ばせてしまう私。

本当に全部平らげてしまいそうな勢いで食べる貴志を眺めながら、私も箸をのばす。うん、合格。

眩いばかりの太陽と青空。お弁当日和とはこういう日の事を言うのだろう。

何だか不思議と幸せ気分な私を狙ったかのように突然、携帯の着信音が鳴り響く。


「ふぇんふぁ?」

「ちゃんと口の中のもの飲み込んでから喋りなさいよ」

多分、「電話?」と訊いてきたのだろう。でも、この着信音はメールのはず。