誰かが言った。始まりと終わりは対として連鎖しているものだと。

しかし、私の場合はどうなんだろ。始まってすらいないのに終わってしまった。

一人で自分が貴志と一番、仲の良い異性だって思い込んで、一人ではしゃいで、友人からの冷やかしも逆に嬉しく思って……なんて道化だ。本当、馬鹿みたい。

でも、本当に馬鹿だと思えるのは自分が今、屋上にいる事。昼休みは決まって貴志が来るっていうのに何で私は屋上で昼食を食べようとしてるんだろう。

立ち上がってスカートの汚れを穿く。

やっぱり教室に戻ろう。

これからは景子達と一緒にいた方が良いよね。貴志に会ったら、いつもの様に接せる自信ないもん。

階段へと続く鉄製の扉を開いた瞬間――、


「あぶっ!!!」


断末魔のような呻き声が聴こえた。


「えっ、た、貴志? ごめっ、扉が顔に。痛い? 痛いよね?」


どうやら私が勢いよく開いた扉が減速する事無く、物の見事に貴志の顔面を強打したようだ。

貴志は「平気。平気」とジェスチャーするように手をヒラヒラ振るが、平気な訳がない。鉄で出来てるんだぞこの扉。


「――と、うん。もう大丈夫。そんなに勢い良かった訳じゃないですから。それより、下に降りようとしてたみたいですけど、何か忘れ物でもしたんですか」

「えっ、そういう訳じゃ……」

「じゃあ早く昼飯にしましょうよ。今日、四時間目のサッカーで頑張り過ぎたんで結構、腹ペコなんですよ」

「あ……」

手を引かれる。私は反射的にその手を振りほどいてしまった。

振りほどかれた貴志は驚きと戸惑いの入り混じった様な表情を浮かべている。