「ちょっと、大変!」
乱暴に教室の扉を開き、景子が戻って来た。
何やらいつもと違ってシリアス顔。彼氏と喧嘩でもしたのかな。
いや、まさか。
何度か景子の彼氏に会った事あるけど、とても景子を大切にしてる人だ。
今まで犬も食わぬような痴話喧嘩すら噂された事がない。
「ちょっと聞いてよ景子。今さ」
「ごめん。後にして。ねぇ百合。ちょっと聞くけどさ、後輩君に彼女がいたって知ってた?」
「え……」
はしゃいでいた二人が一瞬にして静まり返る。
あれっ? 何だろ。景子ったら何、言ってるんだろ。
また、いつもの冗談かな。だとしたら、あんまり笑えないなぁ。
「そ、そうなんだ。……どんな人なのかな?」
「いや、私もさっき耳にしたばかりだから誰かまでは知らないんだけどさ。さっきまで雄介に会いに行ってたんだけど、雄介の後輩に後輩君の友達がいるのよ。
そんで後輩君の事をちょっと、聞こうと思ったら少し前くらいから付き合いが悪いらしくて、問いただしてみたら、案の定、彼女がいたんですって」
「冗談じゃ……」
「私もそう思いたいんだけどね。その子が実際、後輩君に聞いたらしいし」
「……」
私はそれ以上、何も言葉に出来なかった。