あ、真紀が真っ白になってる。沙羅双樹の華が今まさに散りゆこうとしていた。


「裏切り者~。景子達と違って私達はずっと独り身って約束したじゃない」

「痛っ。痛いよ真紀。私、そんな約束した憶えない」


弁明構わず、捏造された約束に対する裏切り行為を攻め立てる真紀。

ちょっと香里には悪いけど、今なら解放してくれそう。

そろりそろりと足音を忍ばせ、二人の脇をすり抜けようとするが、


「オマエもだー」

「きゃんっ」

首根っこを捕まえられた。


「おうおう、姉ちゃん可愛い声出すじゃないか。貴志君とはまだ付き合ってないんだって? それなら私が百合を頂いちゃおうかしら」


睨みを効かせ、寸前まで近付く真紀。

はわわっ私の貞操が……。

いつの間にか矛先が香里から私に変わっちゃってる。

っていうか何で私の方を頂くんだ。普通は貴志だろ。私は女だぞ。

それは兎も角、香里助けてよ。元はと言えばあんたの「実は彼氏います」宣言で真紀がおかしくなっちゃたんだから。


「百合ごめん。此処は任せた」
「香里ーーーー!!!」


本当に逃げた。親友がどうなっても良いって言うのか薄情者め。


「落ち着いて真紀。どっちかって言うと私は真紀寄りじゃない。景子や香里と違って真紀と同じ独り身な訳だし……」

「あっらぁ? じゃあもし貴志君に告白されても付き合わないんだぁ?」

「え……っとぉ」

「貴志君のこと好きなんでしょ?」


言葉に詰まる。

あれ? 何か真紀の目がマジだ。