唇が震えて、心臓が張り裂けそうなくらいに高鳴っているけど、精一杯の勇気を出して言ってみた。

今にも頭からプスプスと湯気が出てきそう。

貴志の前だと、寝ている状態でさえこんな感じだ。もし、起きてる時に言ってみろ。尋常じゃありえない体温になるぞ絶対。

下を向けば地面に垂れるくらいの長い髪を抑えて、そっと、貴志の顔を覗きこむ。

憎たらしいくらい安らかに眠ってくれちゃって。

私は今、君に告白したんだぞ。

額をちょこんと人差し指で弾く。

その時、むにゃむにゃと口を動かす貴志から信じられない言葉が発せられた。


「俺も、です……」


世界が停止する。

先程まであれだけ熱かった体温を一気に冷ます冷たい風が五感全てに染み渡るかのような感覚。

外部は敏感なのに、頭の中は白紙な状態。

普段、気にも留めない下の中庭で響く生徒達の声がやけに五月蝿く聴こえる。

今、貴志は何て言った?

シュミレーションの中の貴志じゃないけど、幻聴じゃないよね。

確かに今、貴志は「俺も、です……」と言った。

問題はその言葉が起きてる状態の言葉か、ただの寝言なのか。


「貴志、もしかして起きてるの?」

「……」

恐る恐る訊ねるが返事がない。胸の高鳴りがより一層増す。

もしいるのなら、神様お願いです。さっきの言葉が貴志の気持ちでありますように。

もう一度、震える手で貴志の身体を揺すってみる。


「俺も……」


ごくり。


「俺も百合さんにゴスロリファッションは無理があると思います」

「寝言は状況を考えてから言え!!!」


思いっきり頭にチョップ。


「あでっ! え? えっ?」


飛び起きるや否やハテナマーク全開の貴志。