「好きです。私と付き合って下さい」

「…………はい?」

「聞こえなかったの? 私、貴志の事が好きなの」

「ちょっと待って下さい。今すぐ頭の中を整理しますから。今日は――四月一日じゃない。っていうかその時、先輩はもう卒業してる。
いててっ。うん。夢オチでもないな。ににんがし。にさんがろく。頭の方も正常に働いてる。
ごめん。百合さん。もう一回、さっきのセリフ言ってくれませんか」

「私、貴志の事が好きなの?」

「何で疑問系になってるんですか。まぁ、良いや。幻聴でもないな。よしっ、そっか。百合さんは俺の事が好えええええええええええっ!!!??」

「前フリ長い!!!」

「ちょっと待って。マジですかっ!?」

「じょ、冗談でこんな事、言えるわけないじゃない」

「いや嬉しいですけど、俺なんかで良いんですか? 才色兼備な百合さんと違って別段、何の取り柄もない俺ですよ? 冗談じゃなくてマジですかっ!?」

「嘘でも冗談でも贋作でも偽物でもまがい物でもなくて私は貴志が好きなの。……私じゃ駄目、かな?」

「いやいやいや、駄目じゃないです。全然、駄目じゃないです。百合さんがそんなにまで俺の事、好きでいてくれたなんてマジですかっ!?」

「しつこいわよ」


うん。こっちの方が想像が容易い。こうなるに決まってる。いや、きっとこうなって欲しいんだろうな。

もし、駄目だったら――。

そんな想像したくもない。どうせ、見るだけだったら幸せな夢を見ていたい。

臆病でごめんね景子、香里、真紀。

告白なんて、私にはそんな勇気がないみたい。

でも、今だったら。傷付く答えが返ってこないと分かってる今だったら。

貴志が目の前にいても――。


「好きよ。貴志」


言った。