もう昼休みが始まって三十分。貴志も必死に頑張っているが、まだ半分も食べきれていない。

私は――もう、限界。

元々、そんなに食べる方ではないのに何でこんなに持って来てしまったのだろう。


「……」

「……」


貴志の箸が止まる。額にはすごい脂汗。

本当に限界みたいだ。お弁当の方はもう三割も残っていなかった。


「貴志。頑張ってくれてありがとね。もう、片付けるから」

「ストップ。……百合さん、あの砂時計かして」

「これ?」

携帯電話から砂時計を外して渡す。

受け取るや否や、貴志はそれをひっくり返しては、またひっくり返しの動作を繰り返した。

三回ほど往復した後、結局その行動に何の意味があるのか全く理解できなかった私は貴志に何がやりたいのか訊いてみた。


「何やってるの?」

「いや、百回往復させて俺の腹をすかせてもらおうかと」

「…………ばか?」

「ひでぇ」


二十秒(砂時計の一往復)×百=二千秒。二千秒=三十三分二十秒。

そして残りの休み時間、二十分程度。完全にタイムオーバーなり。

単純に考えても間に合うわけないだろう。


「つか、もう限界~~~」


パタンっと、お腹を押さえて倒れこむ。


「……貴志?」

「……」

「寝てる」


もしかして、また徹夜でゲームしてたのかな。

おーい、アスファルトは堅くないか~?

重箱を全部片付けて、貴志の顔を覗きこむ。可愛い顔してるな。昼休みが終わるまで眺めてよっかな。

その時、私の中の小悪魔が囁いた。

きょろきょろと周囲を見回す。

……本気か。私。