そこからのあたしは先生の話なんて全く耳に入らなかった。

入学式が終わってホームルームが終わると、あたしは茜に先に帰ることを告げ、教室を飛び出した。


階段を駆け降り、上靴からローファーに履き替えて、門まで走る。


校門を抜けると…

……いた!

門から少し離れた木の下に座り込んでるブレザーを着た後ろ姿。

「蒼!」

声をかけると、振り向いて優しく笑ったのは、あたしの一番大好きなひと。

―安川 蒼大

あたしの彼氏。

あたしより20センチ背が高くて、中学では陸上部だった。

全国大会に出場するほど足が速くて、その成績を買われて、私立高校の体育科に推薦で入学したんだ。

2日前に誕生日を迎えて、あたしより一足先に16歳になった。