外科医が、突き指をしました。

事件は同窓会の夜に。


「ひさしぶりに3on3やろうぜーっ!」


律がバスケ部の友達に誘われて、居酒屋から出て行ったのは知っていた。

別に気に留めることもなく、私は私で女子会をしていたわけで…。


「道重くん、ホントに医者になったんだねー!?」

「なに?信じられない?」

「クラスメイトが医者になるなんて、なんか変な気分だよ」

「そうかなぁ…」


私には当たり前になっている“律が医者になった”という事実。

みんなには違和感を覚えるらしい。

医学部に受かったのは律ひとり。

それぞれの道を歩んでる。

イタリア留学していたり、自営業を継いでいたり、サラリーマンになっていたり。


「柚希と道重くんが結婚したこともビックリしたけど」

「そうだよね!玉の輿じゃん!」


みんなに羨ましがられる。

でも、現実は厳しい。

大学病院の給料は薄給。

私の治療費もかさむ。

一般庶民と同じなんだってば!


「医者だからって給料がいいとは言えないんだよっ!?奨学金も返してるしさぁ…」


そんな反論をしていたら、律の声。


「悪かったな、給料安くて」

「安いとは言ってないよっ!?」


律が私の頭をコツンとやった。

同窓会での律は、私を“自分のモノだ”って主張したいらしい。

さっき元クラスメイトに言われたこと、気にしてんのかな?

“明日葉キレイになったね”って。

ヤキモチ?


「もう終わり?公園でバスケしてきたんじゃないの?」