ルカはその夜いつもより少し早い時間に



いつもとは違う場所、羽衣の部屋を訪れた。



アリーは既に自室へと戻ったようで部屋には居らず



羽衣はまたバルコニーで月を眺めていた。



「眠れないのか?」



突然背後から声がかかり羽衣は素っ頓狂な叫び声を上げた。



ここの王子はいつ何時だろうとノックをする気はさらさらないらしい。



「驚かさないで下さい。心臓がとまるかと思いましたよ。」



「俺がこんなに近づくまで全く気づかないくらい月に魅入ってたからだろう。今夜も綺麗な月だな。」



部屋へ勝手に入っておいて気づかないことを責められて


羽衣は納得いかないと肩を竦めた。


「お仕事はいいんですか?」



「言っただろう。また来ると。今夜は少し冷える。ベッドに戻ろう。」