今まで自分の為にさえ淹れたことのない飲み物。
静まり返ったダイニングで1人苦笑をもらすと
ワゴンに2人分の飲み物を乗せ元来た道を戻る。
静かに部屋の扉を開ければ視界に捕らえるのは窓辺に佇む羽衣の姿。
カタン。とワゴンに乗せたティーカップが音をたてると慌てたように振り向き駆け寄ってくる。
「フフッ。王子様がワゴン押してくるなんてなんだか変な感じ。」
ルカの予感が確信に変わる。羽衣には何か思い詰めていることがあるのだと。
「無理に笑うな。羽衣。何を考えてる?俺には言えないことか?」
まさかそんな言葉が返ってくるとは予想もしていなかった羽衣は硬直してしまう。
「そんなに俺は信用できない?頼りにならないのか?」
ルカはルカで、そんな羽衣に対しというより、無力な自分に苛立ちつい語気に力が入ってしまう。
「ちがっ……違うの。そうじゃないの。」
ルカがあまりにもつらそうな表情をしていて、それを目の当たりにした羽衣の目からはいつの間にか大粒の涙が堰を切ったように溢れだしていた。