「アリー……。あたしちょっとめまいが……。」


なんだか足元までふらついてきた。


「それはいけません。国王様にお会いになって緊張したのでしょう。どうぞ横になられて下さい。」


じゃぁお言葉に甘えて……と羽衣がソファーに腰を降ろそうとした瞬間


―――バンっ―――


部屋の扉が大きな音をたてて開いた。


「お前っ。」


何度か聞いているその怒声に


羽衣は更に眩暈が強くなるのを感じていた。



「ルカ様。いくらルカ様でもレディの部屋にノックもなしに入られては困ります。」


アリーはルカの前に進み出てそれ以上の侵入を拒むが男の力にかなうわけなどない。


「アリー随分な態度だな。俺はこの女に用があるんだ。席を外せ。」


「それはできません。」


アリーには怒りの満ちたルカが羽衣によからぬことを言いに来たことくらい容易く想像できた。


だからこそ必死に羽衣を守ろうとしていたが


羽衣もまたそんなアリーの気持ちがわかっていた。


そっと息を吐きアリーの前へと進み出た。


「アリー。ありがとう。あたしなら大丈夫。一度退席しても平気だから。」


「で…ですが……。」


「お願いだから今は言う通りにして。ねっ?」