おそらくは、いい香りがするのだろう。



綺麗だね。と僕は言う。



彼女は首を振って、



「みんながそう言うけれど、本当はそうでもないよ。じきに枯れてしまうし」



悲しそうに笑った。



花なんだから仕方ないよ。


また、新しいのを育てればいいじゃない。



僕は少しだけ声を大きくして言った。



「だめだよ」



どうして?



「花の命は一つしかないんだから」



それは………。



なんであれ、生きているものはみな平等に一つの命を持っている。



それは誰だって知っている当たり前のことだ。