「ごめん、飯田。ボールとってくれないかな?」
悪ガキである飯田に、僕は笑って言った。
「本郷・・・。」
それほど仲のいい訳ではない僕に話しかけられ、飯田は一瞬戸惑った。それでも小学生くらいの年頃には、男子同士の暗黙の了解がある。女子より男子と仲良くするって言うやつだ。状況を知らない僕が見たら、飯田はあゆみたちと遊んでいるようにも見えなくはない。だから、無理に合わせようとした。
「お、おう。」
ボールを両手で持ち言った。
「俺も・・・一緒にいいか・・・?」
「うん。」
僕は笑って答えた。
「さんきゅー。」
飯田も笑った。そこにはさっきまであゆみをいじめていた飯田の姿はなかった。