「いやだねー。」
いかにも悪ガキと言う少年が、女の子たちに言った。女の子はちょうど三人だ。髪の長い女の子が一人、髪の短い女の子が二人いた。声を出したのは、その髪の短い女の子たちだった。
「なんで、あゆみばっかいじめるのよ。」
そう言ったのは髪の短い、そして少し太った女の子だ。体格がいいせいなのか、さっきから声が大きい。
「だって、こいつムカつくんだよ。」
「ムカつくって、あゆみちゃん何もしてないじゃない。」
今度言ったのは、髪の毛の短い細い方だ。
「うるせえな。とにかくムカつくものはムカつくんだよ。」
悪ガキはすごんだ。それを聞き、あゆみはもっと泣いた。
「大丈夫、あゆみちゃん?」
心配し細い女の子が近づいた。
「葵ちゃん・・・。」
あゆみは彼女に抱きついた。
太った女の子は、さらにあゆみを泣かせた事に憤慨した。
「ほらっ、あんたがまた大きな声出すから、あゆみがあんなに泣いちゃったじゃない。」
「関係ねえだろ。だいたい、大きな声くらいで泣く方がおかしいんだよ。」
「おかしくないね。あんたの声は耳障りなんだよ。キーンって頭に響くんだよ。」
「なんだと。内藤、お前の声の方がうるせえよ。」
まるで怪獣同士が戦っているようだった。その争いの間を白いものが横切った。