だから、俺は気づくことができなかったのだ


否、きっとどこかで気づかないようにと自らストッパーを掛けていた



残酷なまでのあの光景を思い出さないようにと


そうでないときっと俺自身が壊れてしまうから



だから幸弘も、言えなかった



俺の為にずっと黙っていてくれたんだ



“松谷翼”







幼き日の“つーちゃん”は




同一人物だということを



初めて聞かされたとき

まさか翼が俺のことをずっと覚えていたなんて思ってもいなかった


むしろ、もういない存在だとばかり思っていたのだから


だから記憶を改竄したのだから


生きていたとは……