ざわざわと大人たちが駆け出す、音に向かって


どこからか悲鳴が聞こえてきたきがするが、なぜだか遠い


すぐ後ろにいる母さんからも似たような声色が発せられる


「お父さん、あれって、もしかして、あれっ、お父さ…っ…!」



振り向けば青白い顔をした二人


なんだか無性に身体が疼いた


脚が意識とは勝手に動く


気がついたときには人混みのなかを掻き分けていた



「慎まてっ!待ちなさいっ……!」



酷く焦ったような、それでいて恐怖をも孕ませている父さんの言葉は風に流れていく


ざわざわ喚くなかには背伸びをしたり、携帯を片手に持っている人間だらけで


安易に前に進むことなんかできなさそうに見える


いつもの俺だったならすぐに揉まれて地に寝転んでいるところだろう


しかし、なぜか勢い付いてた俺は容赦なく突き進んだ


ただ一心不乱の言葉通りに