大人たちがリビングのテーブルに集まるなかで、俺とつーちゃんは定位置ともいえるソファーに座る


ただ遊びにきただけだと思ってるつーちゃんは「あのね」と可愛らしい声で日常会話を繰り広げる


俺は俺で何か特別なことがあるわけではないので黙って相づちをうつ


にこにこといつもと変わらない俺の大好きな笑顔を向ける


ぎゅぅ……と、胸が弱い力で締められる


「しーくん、しーくん、元気じゃないの?お熱なの?」


5歳の子に読み取れるほど俺は表情に現れていたらしい


「……ぅうん、大丈夫だよ」


「ほんとーに?元気じゃなくない?」


「なくないよ」


「ならいいや」


本当に興味がなくなった単純な様子で、つーちゃんは雨で線が引かれたガラス戸を見つめる


結露してそうなガラス戸はその先の風景を曇らせて見せてくれない


何かを暗示しているように


それは誰かの見えない未来のように